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2020.08.03

日本法社会学会学術大会個別報告分科会①と若手ワークショップの概要

(続き)昨日82日は、ミニシンポジウムと個別報告分科会、そして若手ワークショップがオンラインで行われました。同日午前の部では、個別報告分科会①に参加し、午後の部では若手ワークショップに参加しました。

最初の報告は、郭薇会員(静岡大学)による「法学理論の伝播における『社会的なもの』―2000年〜2018年中国国内文献の川島武宜著作の引用分析」でした。電子化されたジャーナルデータベースを用い、川島武宜の中国語版抄訳論文集である『現代化と法』の法学雑誌での引用件数を年代別(2000年以降)に調べ、中国の法学雑誌で時代ごとに川島がどのように引用されているか、他の同時期の著名な論者の引用と比較してどのような傾向があるかを紹介する興味深い報告でした。中国社会の変化に対応して川島の引用のされ方が変わっている(同じ文献であっても違うことの論拠として使われたりする)という指摘が印象的でした。

2報告は、佐伯昌彦会員(千葉大学)による「少年法制に対する国民の意識の検討」でした。佐伯報告は、少年法改正の論拠として「世論」が引き合いに出される(適用年齢引き下げ賛成派も反対派も「世論」を持ち出す)ことから、少年法に関わる「世論」がどのようなものであって、それがどのように法改正に影響すると考えられるか、ウェブアンケートを使って調査した結果についての興味深い報告でした。一般論として質問した場合には年齢引き下げに賛成する者(80.6%)も、個別具体の設例については処罰を否定する場合が多い(特に14歳の少年の設例について)という指摘については、いいところを突いているという印象を持ちました。

3報告は、馬場健一会員(神戸大学)による「行政不服審査における諮問機関の実態と問題点―各地の情報公開審査会を素材に」でした。ご自身が全国の都道府県と政令指定都市に対して行っている行政文書の情報公開請求(体罰情報の開示請求)に対して、裁判例に従って適切な開示が行われたかどうかを具体的にリストアップし、法令に適切に従って開示が行われているかどうかを分析する挑戦的報告。今回は諮問機関である情報公開審査会の答申に焦点をあて、審査会の人事構成や審議期間といった非法的要因が法令非順守の傾向を生み出していないか検証するものでした。実務家(弁護士)委員が多い審査会ほど法令と異なる答申を出しているというのは衝撃的な発見です。

午後の若手ワークショップも大変興味深いものでした(若手とはとうてい言えないメンバーが結構いました)。ワークショップの前半は「学会奨励賞受賞者との対話」(コーディネータ 波多野綾子会員・東京大学、飯考行・専修大学)でした。

最初の講話は、秋葉丈志会員(早稲田大学)による「『国籍法違憲判決と日本の司法』(信山社,2017)(2017年度学会奨励賞(著書部門)受賞作)をめぐって」でした。フィリピン人と未婚の日本人の間に生まれた子供に日本国籍を認めない国籍法の違憲判決までの経緯と、これに関わった裁判官の経歴について分析した好著。著作の構想と出版までの苦労話のみならず、生い立ちまでさかのぼっての話となり、興味深く拝聴しました。

2の講話は、藤田政博会員(関西大学)による「Japanese Society and Lay Participation in Criminal Justice: Social Attitudes, Trust, and Mass Media (Springer Verlag, 2018) 2018年度学会奨励賞(著書部門)受賞作)をめぐって」でした。裁判員裁判めぐる様々な問題、素人は裁判員としての役割を十分に果たせるのか、裁判員制度によって司法への信頼は高まるのか、マスメディアの裁判員への影響にはどのように対処すればよいのか、といった問題に、法心理学の手法で切り込んだ力作。英語での出版というのも素晴らしい。英語での出版はやはり大変だったようです。

3の講話は、齋藤宙治会員(東京大学)による「「交渉に関する米国の弁護士倫理とその教育効果:離婚事件における真実義務と子どもの福祉を題材に」(豊田愛祥他編『和解は未来を創る(草野芳郎先生古稀記念論集)』(信山社,2018207-236頁))(2018年度学会奨励賞(論文部門)受賞作)をめぐって」でした。同論文は、齋藤会員がハーバードロースクールに留学していた間に行ったウェブアンケートの調査結果を分析したもの。倫理的ジレンマ事例を設け、法曹倫理の既修者と未修者との間でその判断にどのような違いが出るかを明らかにする好論文。いろいろ考えて調査設計をしており、将来性のある研究者だと実感しました。

後半はブレイクアウトセッション。私は秋葉会員のブレイクアウトルームに参加。国際的なアウトプットの意義、研究費獲得の方法、学会で自分を売り込む方法、就職のための戦略など、いろいろなことについて意見交換をしました。もはや若手ではない私は黙っていようと思ったのですが、ご指名などもあり、結構喋る結果となりました。大変盛り上がりました。

今年度の学術大会はすべてオンラインとなり、どうなることかと最初は心配していましたが、結果からすると充実した大会だったと思います。今後の学会の在り方も変わっていくのでしょう。

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