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2020.07.25

第16回仲裁ADR法学会概要

すでに大会から2週間が過ぎてしまいましたが、備忘録は必要なので、簡単なまとめ記事を書きます。2020年7月11日(土)12時30分からオンラインで第16回仲裁ADR法学会が開催されました。本来は九州大学で開催が予定されていましたが、コロナウイルス感染対策のため、オンラインによる大会に変更されました。概要は以下の通りです。

前半(12時30分~14時20分)に行われたのは2件の個別報告でした。第1報告は慶應義塾大学の工藤敏隆会員による「金融ADR機関の業態横断的統合への可能性」(司会は我妻学会員)。日本ではサービス分野ごとに金融ADR機関はいくつも分かれているのが現状ですが、イギリスでは早くからサービス分野を包括する金融ADRが作られており、オーストラリアでも2018年から包括型の金融ADRが動き出しています。それらの試みを踏まえて、日本での包括型の金融ADRを模索する意欲的な報告でした。「包括型」に直ちに移行することは現実的ではないというのは理解できます。

第2報告は名城大学の前田智彦会員による「金融ADRにおける紛争処理の統計的分析」でした(司会は高橋裕会員)。こちらはタイトルの通りで、金融ADR機関についての公開されているデータを統計的に分析するもので、他の民間型ADRとは比べ物にならないほど利用は活発であるものの、近年は徐々に利用が減ってきている現状が紹介されました。金融ADRが変わりつつある期待される役割にどこまでこたえられるのか、難しい局面を迎えているように思います。

総会をはさんで、後半(14時50分~17時30分)はシンポジウムでした。テーマは「ADRにおける代理人の職務上の倫理について」(司会は石田京子会員)。このテーマは繰り返し議論されているものですが、会員の関心も高いことから議論されることになったのだと拝察します。報告者は元裁判官で学習院大学の林圭介会員、弁護士の山﨑雄一郎会員、そして、東京大学の齋藤宙治会員の3名。ADRの代理人の立場の難しさ、とりわけ、交渉する内容が包括的になり、代理権の範囲を枠付けすることが困難であることについて活発に議論が交わされました。

大会からすでに2週間が過ぎており、質疑を含む議論の詳細は省略いたします。オンラインでの大会は集中力が続かないなど、参加者としてもいろいろ難しさを感じました。それでも、通常の大会とほぼ変わらないほどの人数の参加を得て、充実した大会だったと思います。来年度大会以降の正常化を期待しています。

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