2020年度日本法社会学会学術大会ミニシンポジウム①「『法の動態に応じて法の担い手の選択可能性を提示する学問』としての法社会学(法動態学)―法社会学教育の対象の明確化とその必要性」概要
2020年度日本法社会学会学術大会のミニシンポジウムと個別報告分科会は、新コロナウイルスの感染対策のために、オンラインで日程を分散して行われることになりました。
2020年7月18日(土)午後に、ミニシンポジウム①「『法の動態に応じて法の担い手の選択可能性を提示する学問』としての法社会学(法動態学)―法社会学教育の対象の明確化とその必要性」がオンラインで行われました。このミニシンポジウムは弁護士の遠藤直哉会員がコーディネーターで、遠藤弁護士が代表をつとめるフェアネス法律事務所の所属弁護士が報告を担当し、明治大学法学部の太田勝造会員がコメンテーターを務めました。報告の概要は以下の通りです。
最初の報告は、遠藤直哉「刑事・民事・行政・団体の法規制の架橋」でした。報告では、遠藤会員が長年打ち出してこられた、刑事法、民事法、行政法、ソフトロー(団体の自主規範)の段階構造とその組み合わせによる問題解決方法についての紹介でした。フェアネス法律事務所はこの組み合わせを駆使した問題解決を実践し、専門事件を中心に優れた若手弁護士を育てているようです。
遠藤会員の報告に続く第2報告は、相川雅和「粉飾会計における法規制の架橋」でした。オリンパス粉飾会計事件を手掛かりとして、監査法人の役割の重要性とその法的責任強化の影響についての報告で、それでもなお監査法人が適切な監査を行わないことの問題の深刻さが明らかにされました。
休憩をはさんで、第3報告は、小嶋高志「医療における刑事・民事の機能と医療事故調査制度」でした。報告者はもともと麻酔科の医師で弁護士資格をとった方。医師の立場から、医療活動について刑事責任を追及することの問題を強調し、事故再発防止のためには医療事故調査制度をより活用することが望ましいとする内容。
これに続く第4報告は、中村智広「薬害事件における法規制の変動の状況」でした。この方は京都大学で薬学の先生をしたのち弁護士資格を取られた方。1980年代以降の薬害事件を手掛かりに、薬事事件に対する責任追及の望ましい在り方について提言する内容の報告でした。
再度休憩をはさんで、第5報告は、岩渕史恵「非弁活動禁止に対する刑事・民事の機能と弁護士会規制」でした。最近の非弁事件を手掛かりとして、隣接法律専門職と弁護士との関係、さらにそれ以上に問題のある業種としての経営コンサルタントの法律事務への介入の問題点を指摘し、法律専門職の整理一元化と法律事務の完全な弁護士による独占を提言する、問題提起的な報告でした。
最後の報告は、渡邉潤也「団体運営の行政・民事・刑事の機能と弁護士の役割」でした。団体運営における自主規範と見ん刑事法、行政規範の機能、そして、これに関わる弁護士の役割について検討する内容。
フェアネス法律事務所によるミニシンポジウムは、法社会学的知見が法実務でどのように使われるのかを目の当たりにさせてくれる興味深いシンポジウムでした。フェアネス法律事務所で育った弁護士がこれからどのように活躍していくのか、目が離せません。
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