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2020.02.16

全インド法制史学会議概要

2020年2月13日(木)から20日(木)までの8日間、インド・グジャラート州にあるグジャラート国立法科大学(GNLU)に滞在しています。この滞在の前半の目的は2月14日(金)・15日(土)に同大学で開催される第1回全インド法制史学会議(1st All India Legal History Congress)に参加すること、後半の目的はGNLUで学生向けセミナーを実施することです。まずは前半の第1回全インド法制史学会議が終わったので、この会議の概要を備忘録的にまとめておきたいと思います。

第1回全インド法制史学会議は、GNLU准教授リチャ・シャーマ博士とインドの国立法科大学初の女性学長となったタミル・ナドゥ国立法科大学V.S.エリザベス教授が呼びかけ人となり、インド初の試みとして、全インドの法制史研究者(法制史を専門とする研究者ばかりでなく、法学研究者で法制史に関心をもつ者も含む)が集まり、開催されることとなったものです。この会議は、インド法制史学会(Indian Association of Legal History)の発足のための会合も兼ねています。全インドから報告者として47名、そのほかに招待された研究者、学生が参加して活発な議論が行われました。

14日朝の開会式では、GNLU学長のSanjeevi Santhakumer教授の開会の挨拶、私の招待講演(東アジアと南アジアの法と社会の近代化について)、V.S.エリザベス教授の招待講演(インドにおける法制史学の歩み)が行われました。私は、ここ5年あまりシャーマ博士と手探りで共同研究を進めている東アジアと南アジアの近代法成立の比較研究(まだ構想段階に留まっている)について紹介し、比較研究の意義について話しました(参加者の反応はまずまずだったのでこちらの意図は一応伝わったと思っておきます)。

午前の部会(Session1)では、Modernisation of Lawの分科会にChairとして参加しました。ここでは「法の近代化」という主題のもとに、NPOの慈善活動のCSRへの影響、国際取引システムの形成要因についての経済史的考察、実務家と研究者との距離の拡大について議論が行われました。若手研究者ばかりのセッションだったこともあり、着眼点の新鮮な議論に接することができ、刺激を受けました。なぜか私の講演についての質疑応答も行われました。

午後前半の部会(Session2)では、Law, Society and Historyの分科会に参加しました。ここでは、Dharma概念の明確化(これは仏教用語ではなく、今でも実際に使われる法概念です)、唐律にみられる刑罰と今日の刑罰との比較考察、「売春」の位置づけに関する植民地化の影響、インド憲法におけるガンディー不在の意味について議論が行われました。

午後後半の部会(Session3)はEnvironment, Urbanisation and Legal History & Science and Technologyに参加しました。この部会はいくつかの分科会を一つにまとめたもので、何でもありの印象。環境法概念形成における法の移植の役割、野生動物保護法(1972年)の立法史研究、インド古代からの法医学実務(Arhahastra)の研究、古代インドの医療倫理の研究について報告と質疑応答が行われました。古代に行われていたことを現代の視点でとらえることの功罪が議論の中心となりました。

翌15日午前の部会では、Decolonisation of Lawの分科会に参加しました。ここでは脱植民地化が主題となり、近代インド都市法とヨーロッパの都市法枠組の関係、古代ギリシャの政体モデルと民主主義、国際法におけるムガール帝国の位置づけ、インド女性の性的同意年齢に関する考察の報告が行われ、意見交換が行われました。

私に前提知識のない議論が多く、また語学力の問題もあり、はなはだ不十分な理解しかできませんでしたが、学会を立ち上げようという熱意が伝わってくる、刺激的な会議でした。

本会議の閉会式でインド法制史学会(Indian Association of Legal History)の設立が建議され、設立メンバーによる承認を得て発足することになりました。インドの法制史研究者による常設の学術団体の誕生です。コモンローの伝統の影響が大きいインドでは法実務が重視され、法制史や法社会学、法哲学など基礎法学への関心はそれほど高くはありません。インド法制史学会はあえてこれに抗い、学術志向を前面に出し、インド法学界の学術レベルを高めることを目指しているようです。インド法制史学会の今後の発展に大いに期待しています。

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