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2019.10.14

2019年10月13日(日)日本法社会学会関西研究支部研究会例会概要

2019年1013日(日) 13時から17時半まで、同志社大学寒梅館6F会議室にて、日本法社会学会関西研究支部研究会例会を開催しました。報告者は2名。前回の研究会からかなり間が空いてしまいましたが、いずれの報告も内容が充実しており、学ぶことの多い研究会でした。以下は備忘録的なメモです。

1報告は、花村俊広氏(大阪大学大学院博士後期課程・社会保険労務士)による「労働局あっせんにおけるあっせん委員の業務プロセスに関する研究―パワーハラスメント事件を題材としたインタビュー調査―」でした。花村さんは、社労士業務の傍ら他大学の修士課程を修了して、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程に進学された方です。自らも経験のある労働局あっせん業務について、あっせん委員の実務経験が2年以上ある者を対象とした半構造化面接によるインタビューを実施し、得られたデータをM-GTAにより分析し、あっせん委員が、どのようにして当事者間の話合いを促進しているのか、手続を進めるうえでのボトルネックは何か、といったことを解明することで、委員の資質向上等を図っていくためのモデル形成を行うという、意欲的な研究成果の報告です。あっせん手続は非公開ゆえ、インタビュー調査の実施には様々な困難があり、対象者の選定にもどうしてもバイアスがかかってしまうという点で限界はあるものの、実務と理論を融合させた優れた研究であることは確かです。花村さんのこれからの研究のさらなる進展が期待されます。

2報告は、樫村志郎氏(神戸大学大学院法学研究科教授)による「理解社会学の継承者としての Parsons Garfinkel — Parsons 1937年までの初期著作とGarfinkelによるParsons Primer(『パーソンズ入門』)の読解を通じて—」でした。通俗的な社会学史では、パーソンズ社会学とガーフィンケルのエスノメソドロジーは逆接的関係にあると見られがちです。しかしながら、ガーフィンケル は1946年から1951年までパーソンズ の学生であり、1960年頃にはパーソンズと少なくとも一部では共同研究をする関係にあり、したがって、ガーフィンケルは当然にパーソンズの強い影響を受けています。どのような問題意識のもとにパーソンズが社会システム理論を作り上げていったのか、その問題意識はガーフィンケルにどのように受け継がれているか、パーソンズのHolismや目的手段図式、規範の位置づけなどを一つずつ明らかにすることで、解明が試みられました。樫村報告はあまりに情報量が多く、私には理解できていないところが多々あるのですが、パーソンズの初期著作の解釈から、社会的秩序の成立可能性についての問いを掘り下げ、パーソンズの問題意識を浮かび上がらせる手際のよさは圧巻でした。 

今回の研究会でも、いろいろ勉強することができました。なかなか報告者が見つからず、充実した研究会を実施するのは大変ですが、頑張って続けていきたいと思います。

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