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2019.06.20

RCSL 2019 オニャーティー学術大会概要その1

RCSL (Research Committee of Sociology of Law) 2019年国際学術大会に参加するため、スペイン・バスク州のオニャーティーに来ています。大会日程は、2019619日(水)から21日(金)までの3日間。オニャーティーにある国際法社会学研究所(IISL)が会場。中世の趣を残すオニャーティー大学の建物(多くが歴史的建造物)で大会が行われており、それだけでも驚くばかり。大会そのものは300人程度の参加者でこぢんまりしていますが、宿泊施設が合同であるなど、合宿に近い雰囲気で、一気に知り合いが増えます。例によって備忘録を兼ねて大会の概要をまとめておきます。

大会は19日の9時から始まりました。オープニングセレモニーでは、RCSL会長、LSA理事、バスク州政府司法副長官、など6名が挨拶(スペイン語で内容が分からないものあり)。そのあと、1989年にオニャーティーに国際法社会学研究所(IISL)が設けられた経緯などについて紹介がありました。

これに続いて、プレナリーセッション1として、昨年度にPodgorecki Young Scholar Prizeを受賞した平田彩子さん(岡山大学)と今年度Podgorecki Senior Scholar Prizeを受賞したMavis Maclean先生(Oxford)の表彰と講演が行われました。平田さんは東京大学とUCバークレーに提出した博士論文が、Macleanさんは長年の家族法研究とRCSL会長としての貢献が受賞の対象です。平田さんの『自治体現場の法適用—あいまいな法はいかに実施されるか』(東京大学出版会・2017年)は極めて優れた研究です。世界的に活躍してほしい若手の1人です。

セレモニー直後の第1セッションでは、Law and Sustainable Developmentの部会に参加しました。ここでは、世代間正義について議論が行われました。具体的には、破綻した開発会社の環境に対する世代間責任をどのように担保するか、韓国でのCO2固定化・蓄積政策とこれに関する立法についての紹介、食糧生産における世代間正義の検討、そして世代間正義の直面する新たな危機について議論が行われました。世代間正義と経済成長との両立をどうするかなど、解決困難な課題についてフロアも交えていろいろ意見が出されましたが、道のりは遠いという印象しか残っていません。

昼食後に行われた第2セッションでは、Law, Institutions and Developmentの部会に参加しました。ここでは、主として規制ないしガバナンスの問題が議論されました。具体的には、ある法的規制は負担だと感じられるのに、他の規制は必ずしもそうではないのは何故か、国家と企業の強力な連携がブラジルのグローバル企業をどのように変化させたか(中国との比較)、航空産業における報告制度や情報共有制度がどのように航空安全に働いているのか、AIによるロボットアドバイザリー企業をどのように規制すべきかについて議論が行われました。中心も頂点も存在しないグローバル社会で、ソフトローなどによる直接的でない規制ないしガバナンスに注目が集まっていることは理解できます。もっとも、そのような規制・ガバナンスの危険性にどのように対処するのかについては、まだ議論が尽くされているとはとうてい言えない状態です。

3セッションでは、Comparative Studies of the Legal Professionsの部会に参加しました。この部会の議論はやや統一性に欠けていたのですが、日本の税務統計を用いた弁護士の年収動向についての分析、fMRIを用いたリーガルマインドについての脳科学実験結果の紹介報告、法実務における生きた伝統がどのようにして形成・維持されるかについての報告、高齢弁護士が直面する引退の問題、若手法学研究者のキャリア形成をどのようにして支援するかについての議論が行われました。税務統計を子細に検討すると、日本でも高収入の弁護士は特に減ってはおらず、法人化と組織内弁護士の増加によって弁護士の収入が見えにくくなっていることの反映にすぎないという検証結果は、実感に照らしても納得できます。リーガルマインドの脳科学研究はまだまだ始まったばかりで、分析枠組の構築に向けての試行錯誤とデータ蓄積の段階にとどまっているという印象です。社会的認知の脳科学的構造解明はこれからの課題です。高齢弁護士の引退問題、若手法学研究者育成の問題はいずこでも悩ましい問題だと痛感しました。

初日はあっという間に過ぎました。今日は第1セッションで私自身の報告もあります。私自身の研究ではなく共同研究の紹介報告なので少し緊張しますが、頑張りたいと思います。

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