« June 2018 | Main | October 2018 »

2018.07.28

第20回比較法国際アカデミー国際会議概要その2

727日(金)朝一の時間はOptional Choice of Courts Agreementsのセッションに参加しました。裁判管轄の選択的合意についてのセッションです。京都大学の西谷祐子先生がオーガナイズしているセッションで、オーストラリア、カナダ(ケベック)、中国、フランス、ドイツ、イタリア、シンガポール、南アフリカ、台湾、米国、日本(日本の報告者は体調不良により欠席で書面報告)のNational Reporterが報告を行い、フロアとのQ&Aを行いました。詳細は省略しますが、大半の国で裁判管轄の選択的合意は認められているけれども、認められる範囲の広狭にはかなり差があること、中国は今のところこれを例外的にしか認めていないこと、裁判所による公序等を理由とする介入の程度も様々であること、フランスは片面拘束的な選択的合意を認めていること、排他的合意については非効率とみる立場が有力であることなど、いろいろなことを知ることができました。

午前の次の時間には、Plenary SessionThe Right to Be Forgottenに参加しました。ネット上の情報の「忘れられる権利」についてのセッションです。Google Spainに対するCJEUの判決(Google Spain v AEPD and Mario Costeja González 2014)が出て以来、EU諸国では「忘れられる権利」について様々な議論が行われています。このセッションでは、カナダ、デンマーク、イタリア、日本、台湾、トルコのNational Reporterが「忘れられる権利」についてそれぞれの国の議論を簡単に紹介し、「忘れられる権利」と「表現の自由」や「知る権利」とのバランスをどのようにとるか、提訴権者の範囲をどうするか、どの情報を削除ないしリストから外すかを誰が決めるのか、公的機関の役割、社会的回復をどのように図るのかといったことを議論しました。日本では、2017131日に最高裁がGoogleの検索結果の削除を求めた仮処分申立に対して具体的な判断基準を示しています(削除請求自体は認められなかった)が、この基準が集中的に議論されていたのが印象に残りました。

お昼の時間には、Sponcered Lunchonが行われました。ランチョンのテーマはRecognition and Enforcement of Foreign Judgments in ASEAN, Australia, China, India, Japan and South Koreaです。外国判決の承認・執行について、シンガポール、日本(体調不良により欠席)、中国、韓国、オーストラリア、インドのNational Reporterが各国の状況について紹介し、フロアも交えて議論しました。外国判決の承認・執行についての各国の立場はまちまちです。コモンロー諸国では、外国判決の承認・執行が広く認められ、その要件も確立されているのに対して、大陸法諸国では外国判決承認・執行の可否、要件の広狭についてかなり多様性があることが紹介され、その融和を図り、要件の統一化を進めるプロジェクトが紹介されました。これが実現すれば、国際取引上の判決の執行はかなり容易になります。外国判決承認・執行の統一化の基本原則に関する議論はかなり進んでいるとのこと。実現すれば国際取引上のリスクが大幅に少なくなります。プロジェクトの成功に期待いたします。

午後の時間には、Plenary SessionClimate Change and the Liability of Individualsに参加しました。気候変動に対する個人による環境訴訟のセッションです。最初の報告者が、気候変動に対抗する試みについて概括的な報告を行い、気候変動に対しては国家や国際機関に対して取り組みを求めていくことから、個人が訴訟を通じて環境破壊企業や政府を訴える方向へと運動のやり方がシフトしていることを紹介。これに続いてカナダ、アメリカ、EU、その他(ex. パキスタン)の環境訴訟が紹介されました。国家や国際機関は様々な利害を抱えており、気候変動への対応は遅れがちになります。結果的には、行政訴訟や不法行為訴訟の形で政府や環境破壊企業(石油会社等)を訴えるほうが効果的とのこと。政策形成訴訟のグローバル版という印象。環境訴訟が気候変動との闘いのリーサルウェポンというのもどうかという気がしますが、政府や国際機関の動きが鈍い以上、ほかに方法がないということなのだろうと思っています。

このあと、国際比較法アカデミーの総会(私はメンバーではないので参加していません)があり、夕方にクロージング・バンケット。最後まで楽しめる大会でした。

4
年後の大会はパラグアイで行われるとのこと。遠方なので参加は難しそうですが、興味はあります。どのような企画が立ち上げられるか、注目したいと思います。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.07.27

第20回比較法国際アカデミー国際会議概要その1

2018722日(日)から28日(土)まで、福岡市(アクロス福岡・九州大学椎木講堂・福岡国際会議場・福岡大学メディカルホール)にて、第20比較法国際アカデミー国際会議(The 20th Congress of the International Academy of Comparative Law)が行われています。4年に1回、世界のどこかで開催される比較法のオリンピックともいうべき大会です。世界各国から比較法研究者や関連法分野の研究者、法実務家が1000人近く参加しています。私自身、ご縁があって、組織委員会のメンバーの一人として本大会に参加しています。とはいえ、22日(日)の開会セレモニー、23日(月)のセッションは授業の関係で参加できず、23日夕方に行われた第1回組織委員会からの参加です。しかも、25日(水)に期末試験を実施する必要があり、一回大阪に戻りました。腰を落ち着けて大会に参加するというのは難しいことです。本大会もいろいろ学ぶことが多いので、以下備忘録を残しておきたいと思います。

私が本大会のセッションに参加したのは24日(火)の午前のセッションからです。この時間はReconciling Legal Pluralism and Constitutionalism: New Trajectories for Legal Theory in the Global Ageのセッションに参加しました。法多元主義と立憲主義との融和は可能か?という議論をするセッションです。

法多元主義と立憲主義には相いれない側面があります。立憲主義は近代ヨーロッパ固有の歴史的背景と法思想に立脚する原理です。これに対して、法多元主義は、多様な文化、法思想を大前提とし、立憲主義に特権的な固有価値を承認しない(承認したとしても相対的な優位でしかない)。法体系間のコンフリクトの問題もあります。これらの問題について、メインスピーカーを含めて5人が口頭報告をし、フロアとの議論が行われました。欧州の報告者は移民の法文化と自国の法文化のコンフリクトの話をし、シンガポールの報告者は自国のイスラム裁判所の話をし、中国の報告者はアジア固有の法文化と立憲主義との関係について報告をしました。フロアの参加者はオーストラリアやニュージーランドの原住民の法文化をどのように位置づけるのか、儒教的法文化と立憲主義は本質的に相いれないのではないか、法多元主義も潜在的には立憲的価値を共有しているのではないか、といった議論が提起され、大変に盛り上がりました。この日は、このセッションの参加だけで大阪に帰りました。

本務校で期末試験を実施して大会に戻ったのは26日(木)の午前のセッションからです。同日午前にはComparative Law and Multicultural Legal Classes: Challenge or Opportunity?のセッションに参加しました。現在、世界のどこの大学でも多くの留学生、移民二世や三世が学んでおり、これらの学生に比較法はどのように役に立つのか、逆に、多様な文化的背景をもつ学生は、比較法の授業にどのように貢献できるか、といったことが議論されました。

報告者はイタリア、トルコ、中南米、カナダの大学で比較法を教えている教員たち。それぞれの大学でどのような授業を行っているか、異文化の学生を受け入れることの難しさ、比較法理解にとっての意義、学生の進路への貢献といったことについて、それぞれの経験と意見が出されました。フロアの参加者も、一家言ある者ばかりで、たくさんの質問とコメントがあり、議論が尽きない状況でした。

次の時間はCongress in Congress 1に参加しました。これは企画委員会の独自企画ということで、公募により報告者が選ばれたセッションの一つです。Congress in Congress 1~4まで一連の独自企画が行われました。私はその1~3まで連続で参加しました。

Congress in Congress 1
Sharing Economy(共有経済)についてのセッションでした。報告は、日本の旅館業法改正と民泊規制に関する報告、カーシェアリングに関する報告、法実務における共同作業の意義に関する報告、都市の共有化についての報告が行われました。どの報告でも、規制など法的問題の指摘に加え、共有経済とそのために前提となるAIIoTといった技術的インフラの重要性が指摘され、技術によって新しい社会の可能性が開かれ、そのために新たな法律問題が発生しているということが実感されました。

Congress in Congress 2
Autonomous Driving(自動運転)についてのセッションでした。技術が社会をどのように変えるのかに関わるセッションの第二弾です。報告では、自動運転に関わる法律問題にはどのようなものがあるか、実際、技術的にはどこまで自動運転の安全性は確保できるのか、情報ネットワークに関わるDeNAがなにゆえに自動運転に関わり、どのように社会を変えようとしているのか、といったことが紹介され、この問題に法律家はどのように関わっていくことができるのか、といったことが議論されました。自動運転が安全に制御は様々なシステムの相互作用によって実現されるのであり、そのためには、AIや情報ネットワークの活用が不可欠です。社会のそれぞれのアクターと技術とがAIIoTを通じて整合的に組織化されることで自動運転社会ははじめて可能になる。そしてそのための制度作りをするのが法律家だというのです。もっとも、その場合に法的責任ばかり議論していては不十分で、より広い意味でのマネジメントに法律家が貢献するのでなければならないという指摘には唸らせられました。

Congress in Congress 3
は、New Technology, the Innovation Economy and the Lawでした。新しい技術が可能にする経済のイノベーションと法について議論するセッションです。報告では、ブロックチェーンを用いた医療情報のやり取りにはどのような問題があるか、オープンソースと企業秘密との調整は可能なのか、ブロックチェーンを用いた経済取引の規制をどのようにして実現するか、ブロックチェーンを用いた経済取引に対する法的規制はそもそも可能なのかといった議論が行われました。倫理は規制にとってどのような役割を果たすのか、個人情報保護と情報の共有化の調整はどのようにして実現できるのか、という問いは今の社会が直面している最も大きな変化に関わる議論だと思います。技術が社会を変え、それに応じて規制の在り方は変わらざるを得ませんが、技術が規制を容易にするという側面もあり、それらの相互作用として規制の在り方を考えていくことの重要性を痛感しました。

Congress in Congress 4
には諸般の事情で出席しませんでした(LegalTechAIが法実務にもたらすインパクトについてはたいへん興味があったのですが)。いずれにしても、現代社会が直面している最新の法律問題を比較法的に検討することには大きな意義があり、これから考えていくべき多くの課題を突き付けられたと感じています。残りのセッションがさらに楽しみです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.07.24

2018年7月14日(土)第14回仲裁ADR法学会大会概要

すでに当日から1週間以上過ぎてしまいましたが、2018年7月14日(土)12時30分から、 国士舘大学世田谷キャンパスMCH(メイプルセンチュリーホール)1階大教室にて、第14回仲裁ADR法学会学術大会が開催され、参加してまいりました。毎回興味深い企画が行われるのですが、今回のシンポジウムのテーマは「子の最善の利益保護とADR(家事調停)のあり方」。実務上も理論上も極めて重要なテーマで、大変な盛会でした。以下は備忘録を兼ねて、大会の概要を記録しておきます。

大会前半は個別報告。2件の報告が行われました。第1報告は、高杉 直会員(同志社大学)による 「『京都国際調停センター』と調停人の育成」。国際商事紛争の解決のために立ち上げられ、目下受付開始に向けて準備が進められている「京都国際調停センター」について、その設立に関わった関係者として、設立経緯や目的、想定される事件処理などについて紹介するご報告。国際商事紛争処理のトレンドは仲裁から調停へと変わりつつあるとの指摘には、まあそのようなところもあるなという感想。

第2報告は、吉岡 すずか会員(桐蔭横浜大学)による「法テラス認知状況等調査からみた認知の深度・認知経路と困りごと解決行動の類型化―日米英の先行研究を踏まえて―」。法テラスの認知状況について、認知経路に焦点を当てて調査を行い、回答者が法テラスについて認知している情報の幅を「認知深度」として分析し、どのような認知経路で法テラスにたどり着いた人が法テラスの業務についてどの程度理解しているかを明らかにする、意欲的研究のご報告。さらなる属性分析も予定されているとのこと。完成した成果の公表が楽しみです。

そのあと総会・休憩をはさんでシンポジウムが行われました。シンポジウムのテーマは「子の最善の利益保護とADR(家事調停)のあり方」です。理論上も実務上も重要なテーマで、フロアの関心の高さが窺われました。報告者は、長谷部 由起子会員(学習院大学)、_林 賢一会員(家事調停委員、元家庭裁判所調査官)、_池田 清貴 会員(弁護士)、原田 綾子 会員(名古屋大学)、司会は本間 靖規会員(早稲田大学)、稲田 龍樹会員(弁護士、前学習院大学教授)、コメントは_若林 昌子会員 (公益社団法人家庭問題情報センター理事長)でした。

長谷部報告は、主としてオーストラリアの新しい立法と実務を手掛かりに「子の意思」とはなにか、「子の意見」と「子の意思」はどのような関係にあるのか、子の意見聴取を行う際にはどのような問題が生じるのかといった点について網羅的に明らかにするご報告。林報告は子の意見聴取に関わる際の家裁調査官の役割や課題についてのご報告。池田報告は、ご自身が手掛けておられる「子どもの手続代理人」としての業務を紹介し、課題を検討するもの。原田報告は、「子どもの意見表明権」の理念を紹介し、家事調停への子どもを参加させることのメリットとリスクを論ずる好報告でした。

質疑応答では、長谷部報告についてオーストラリアをはじめとする諸外国の実務に関する質問がいくつもでたほか、子どもの手続代理人と家裁調査官の業務の関係、家裁調査官が子の意見聴取をする場合の注意事項、子の手続代理人の養成と質の確保、子は手続主体になりうるのか、といったことについて、多数の質問が行われました。コメントは、公益社団法人家庭問題情報センターの民間ADRとしての経験とその課題に関するものでした。

今回の仲裁ADR法学会も質が高く、多くのことを学びました。来年度は交通ADRがテーマとなるとのこと。これもまた楽しみです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.07.04

2018年7月1日日本法社会学会関西研究支部2017年-2020年期第4回研究会概要

201871日(日)13時から17時過ぎまで、大阪大学豊中キャンパス 法学研究科/高等司法研究科大会議室(法経研究棟4F)にて、日本法社会学会関西研究支部2017-2020年期第4回研究会を開催しました。今回は、博士後期課程在学中ないしポスドクによる、若手の研究報告でした。いずれの報告も内容的に充実しており、これからの発展を期待させるものでした。以下、備忘録として可能な範囲で簡単な紹介を残しておきます。

第一報告は、ウミロフ・フィトラト氏(大阪大学大学院法学研究科博士後期課程)による「行政による合憲性審査の比較法的研究-日本及び旧ソ連邦諸国の制度を対象に-」でした。内容は、旧ソ連邦諸国、特にロシア、カザフスタン、ウズベキスタンにおける行政による事前の法令審査制と日本の内閣法制局のそれが果たしている役割について、「機能的等価性」を手がかりとして比較検討するというもの。これらの各国で事前の法令審査制がどのように構成され、いかなる手続きにおいて、どの程度審査権が認められているかについて明らかにし、行政機関による合憲性の事前審査は裁判所による合憲性審査と比べてどの程度合理的でありうるのかについて、比較検討が行われました。旧ソ連圏の法令審査制について紹介する研究はこれまでほとんど行われていないので、きちんと纏まれば意義のある研究になると思います。

第二報告は、掛川 直之氏(日本学術振興会特別研究員PD/大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員)による「社会的排除状態におかれた出所者の社会復帰に関する研究:福祉的支援における住まいの役割に着目して」でした。この報告は、近年の刑事司法と福祉との連携のあり方について考察するもので、社会的排除状態におかれた出所者の社会復帰支援における「住まいの確保」の重要性に着目して論ずるものです。さらに、更生保護として論じられてきた刑事司法的な犯罪者「処遇」の枠組みではなく、あくまで福祉的観点から、出所者の生活再建のための「支援」として復帰支援のパラダイム転換をうながし、地域を基盤とした出所者支援を実現するための方策について問う、意欲的な報告でした。再犯防止を復帰支援の第一目的としないこと(社会復帰のプロセスでは小さな過ちは避けられないという観点に立つ)、安心して居住し、生活再建することを通じて、出所者が地域住民とのあいだで信頼関係を構築することができることが復帰支援にとって決定的に重要であることは、よくわかります。ただ、その信頼関係は容易に失われてしまう危ういものです。実際上の課題は多いと痛感しました。

次回研究会は10月ごろに行います。すでに調整は始まっています。興味深い報告が行われるはずです。次回も楽しみです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« June 2018 | Main | October 2018 »