LSA New Orleans 2016大会概要(その3)
6月4日(土)には、午後の3つのセッションに参加しました。
同日午前中はプレナリーセッションなどがあったのですが、自分の報告が終わって緊張の糸が切れたこともあり、朝起き上がることができなかったので、参加していません。お昼からあとのセッションのみ参加しました。
お昼の時間(12時から2時30分)にはAssociation Lunchon & Award Ceremonyが行われました。これは懇親行事ではありますが、日本から平田彩子さん(元・東京大学法学政治学研究科助教、UC Berkeley研究員、現・京都大学准教授)がUC Berkeleyで提出されたご論文
Regulation In-between: How Does Inter-Office Interaction
Matter for Street-Level Regulatory Enforcement?がGraduate
Student Paper Awardを受賞され、この場で表彰されたことは特記すべきです。日本のみならず、アジア諸国も含めて初めての受賞です。平田さんの受賞を心からお慶び申し上げます。
2時45分から4時30分までの時間は、Access to Justice and Civil
Justice System(CRN10, Paper Session)に参加しました。司会はダニエル・H・フット(東京大学)、ディスカッサントは前田智彦(名城大学)。報告は、①Sheona
Burrow(University of Glasgow/CREATe) New Forums for Intellectual Property Claims: The IP Small Claims
Track in England and Wales、②Bruno Takahashi(University of São Paulo/Federal Court of Brazil) Our (allegedly) litigious society: Why do we have so many social security
claims in the Brazilian Judiciary?、③Therese MacDermott(Macquarie University, AUS) Public interest
litigation and anti-discrimination claims、④Paulo
Eduardo Alves da Silva(University of São Paulo) ACCESS TO JUSTICE IN BRAZIL - A shift toward restriction and
possibilities from a new theoretical frameの5報告。ここでは、イギリスの知財少額訴訟、ブラジルの「訴訟好き」についての考察、オーストラリアの対差別クラスアクションについての紹介、ブラジルの司法アクセス規制政策についての検討が行われました。Bruno Takahashi氏は一昨年から昨年にかけて大阪大学で客員研究員をしていた人で、報告には私の問題意識も反映されており、感銘を受けました。社会保障給付に関わる行政等による相談・調整が不満の解消に役立っていないために結局訴訟が行われる結果になっているという指摘には考えさせられました。
4時45分から6時30分までの時間は、Legal Counseling and Mediation(CRN10, Paper
Session)に参加しました。司会は入江秀晃(九州大学)、ディスカッサントは大田勝造(東京大学)。報告は、①入江秀晃 Beyond Armchair Dispute Resolution discussion: An empirical study on
private dispute resolution in Japan、②Luigi Cominelli(University of Milan) Mediators with Italian
characteristics. Styles, conflict attitudes and settlement rates、③Ryan Fortson(University of Alaska Anchorage,
Justice Center) The Effect of Legal Counsel on Outcomes
of Custody Determinations,
④Kerri Scheer(University of Toronto) The Priority of
“governability” in Medical Self-Regulating Bodies: A case study of The College of
Physicians and Surgeons of Ontario Discipline Committee Hearings、⑤Annette Olesen(University of Southern
Denmark) Transform rehabilitation Lawyer-client-mentor interactions
inside ‘Community Rehabilitation Companies’ in Englandの5報告。ここでは、日本の弁護士会紛争解決センターの利用者満足度調査結果、イタリアの商工会議所による調停スタイルと和解成立率についての調査結果の紹介、アラスカにおける子供の養育権決定についての弁護士関与の影響、医師の自己規律団体のガバナビリティーについての調査、負債を抱えた受刑者のメンタリングプログラムの実態について議論がありました。入江報告は弁護士会ADRの利用者満足度は高いものの、当事者関係が改善される場合は少ない、むしろ悪化する場合が多い。他方、同席ならば当事者間関係が悪化しても満足度につながる可能性があるという指摘をしていました。いずれの報告も示唆に富むものでした。
同日の晩はロヨラ大学トゥレーヌ・スクール・オブ・ローでローカル・レセプション。地元の有名ロースクール訪問の機会は貴重。
大会は6月5日(日)午前中まで行われていたのですが、帰国スケジュールの関係で参加できませんでした。
※今回のLSA大会でも、おおくの出会いがあり、また様々な最新の研究に触れることができ、大いに学ばせて頂きました。来年度はLSAとRCSLの合同大会がメキシコシティーで行われる予定です。十分に準備をしてこれに臨みたいと考えています。来年度大会が本当に楽しみです。
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Comments
入江先生、私の記憶が曖昧だったので(一週間経ってから書いたのがよくなかった)申し訳ありません。補正いたします。
Posted by: kota fukui | 2016.06.15 05:26 PM
ご紹介、コメントありがとうございます。
また、他の報告についての丁寧な紹介も参考になります。
私の報告に関してですが、弁護士会ADRの結果、利用者の満足度は決して低くありません。
ただし、当事者関係が改善される場合は少ない、むしろ悪化する場合が多いという話をしました。
また、同席ならば当事者間関係が悪化しても満足度につながる可能性があるという指摘もしたつもりです。
恐縮ですが、少し補足させていただければと思いました。
(私の説明がまずかったのだろうと思っています。)
私のプレゼンでは、ペーパーも準備できず、PPTをアップロードできるタイミングものがし、失敗感があります……
Posted by: 入江 | 2016.06.13 08:46 AM