2013年8月6日(火)日本法社会学会関西研究支部研究会概要
2013年8月6日(火)13時から、同志社大学寒梅館6階会議室にて、日本法社会学会関西研究支部研究会が開催され、参加して参りました。今回は比較的に研究キャリアの若い研究者2人による研究成果報告の予定だったのですが、1人が高熱で倒れ、九州大学法学研究院の入江秀晃准教授による報告とディスカッションだけとなってしまいました。もっとも、その分密度の濃い議論が出来たことは言うまでもありません。入江さんはADR(裁判外紛争解決)研究の注目株のお一人で、三菱総合研究所勤務を経てから研究者の途に入った方。研究者としてのスタートは少し遅めですが、社会経験を背景として質の高いADR研究をされている方です。昨日は、入江報告を聞こうと、弁護士や司法書士の方も研究会に参加しておられました。入江さんの研究への注目度の高さが窺われます。
入江報告「現代調停の研究―技法論を超えて―」は、基本的に、ご著書『現代調停論:日米ADRの理念と現実』の内容を紹介し、ディスカッションに繋げるというものでした。最初に自己紹介・研究の経緯紹介を行い、なぜ日本の民間調停が活性化しないのかという問いを立て、日米におけるADRの理念と実務実態を分析し、(暫定的)結論を出すというものでした。入江さんは、民間調停の活性化のための環境が整っていないから日本では民間調停が活性化しないというスタンスに立ちます。いろいろ紹介されたので私なりに理解した範囲で「活性化のための環境が整っていない」という意味を咀嚼してみると、米国とは異なるADRの存在意義が日本で十分に説明されていないこと、民間調停機関の財政基盤が充実しておらず、競争環境が未整備であること、規制が多すぎること、対象が調停に偏りすぎ、相談が含まれていない、といったことが、日本の民間調停が活性化しない理由ということになるのだと思います。
ディスカッションでは、日本で行われているADRの理念論は利用者のニーズとはかけ離れたところで行われているのではないか、ADRの「機能」とはどのようなものなのか、ADR利用を活性化させるための「環境」とはそもそも何のことを言っているのか、活性化の必要条件は何か、日本の民間調停はコミュニティーとどのような関係にあるのか、といった様々な質問が出され、議論が行われました。この研究会はADRについての論客揃いなので、勝手に議論が展開されることになり、入江さんには申し訳なく思っています。
いろいろ詰めるべきところがあるとはいえ、入江さんの問題提起は重要なものばかりです。このお盆過ぎから1年間アメリカに留学されるとのことなので、その成果を組み込んで、さらに入江さんのADR研究が深められることを確信しています。入江さん、すばらしい報告をありがとうございました。
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