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2013.03.23

第3回東アジア「法と社会」学会学術大会概要(その1)

2013322日(金)・23日(土)の2日間、中国・上海交通大学凱原法学院にて、第3回東アジア「法と社会」学会学術大会(The Third East Asian Law & Society Conference)が開催され、第1日目が終わったところです。この学会は、中国、韓国、日本をはじめとする東アジアの「法と社会」(広い意味での「法社会学」)の研究者が集まって多面的な議論を行い、相互理解を深めるとともに、研究者同士のネットワークを構築するための国際学会で、今回は第1回香港大会(20102月・香港大学)、第2回ソウル大会(201110月・延世大学)に続く、第3回大会です。東アジア諸国のみならず、オーストラリア、米国、ヨーロッパからも参加があり、世界各国から200名近い研究者が集まってきています。大会のサブタイトルが"Building the Asian Socio-Legal Community: Theoretical Visions and Empirical Challenges"となっていますが、まさにこの学会の本質を表すものだと思います。大会会場は上海交通大学凱原法学院の最新の建物で、同大学の成長の勢いが現れていました。大会の内容は多岐にわたっており、オープニングとクロージングのセッションを除くと同時並行で6つのパネルが走っているので、包括的な紹介は不可能です。私の参加した範囲で雑ぱくな印象のみ記録として残しておきたいと思います。

大会第1日目午前の部ではオープニングセッションが行われました。オープニングセッションでは、最初に、上海交通大学凱原法学院院長のJi Weidong(季衛東)教授による開会講演Silk Roads Toward the Asian Community of Law and Societyが行われました。「法と社会」のアジア共同体に向けての構想を提起する講演で、大会の始まりにふさわしいスケールの大きな講演でした。これに続いて、学会誌”Asian Journal of Law and Society”が創刊されたということで、そのLaunch Eventが行われました。ここでは4名の編者による挨拶が行われました。そのあと、元中国最高法院副院長のLuo Haocai氏による開会講演があり、ソフトロー研究の深化と研究共同体の創設への期待が強調されました。さらにこれに続くKeynote Speechでは、青山学院大学の宮澤節生教授が南アジアを含めたアジア全体の「法と社会」学会の創設を提案する話をされ、また、ニューヨーク州立大のDavid Engel教授がタイでの研究を手がかりに「法が働かない」場面の研究をこそ「法と社会」の研究者が学際的に行うべきだと強調されました。

コーヒーブレークを挟んで、オープニングセッションの後半もKeynote Speechが続きます。まず、シカゴ大学のTom Ginsburg教授が北東アジアの法制度改革に関して国民参加による正当性への関心の高まりを指摘する話をされ、続いて、ニューヨーク大学のFrank Upham教授が手続を重視するアメリカの夢と実体を重視する東アジアの現実を対比する話をされました。さらにハーバード大学のDavid Wilkins教授はグローバル経済の展開が法構造と法曹の役割を大きく変えつつあることを強調する話をされ、最後にシンガポール国立大学のAndrew J. Harding教授が南アジアを含めた「法と社会」学会構築に向けての課題について話をされました。いずれも東アジア「法と社会」学会の将来のあり方に関わる重要な問題提起でした。

内容が盛りだくさんすぎて時間が押してくることとなり、午後の部は30分遅く始まりました。午後の部の前半Concurrent Session 1では、私はChamber 4 (Panel 4)Law and Social Developmentに参加しました。ほとんど何でもありというパネルで、アジアの文化財保護に関する報告、都市インフラと法の支配との関係について検討する報告、中国の地方政府評価報告書の分析を手がかりに法の支配と政治腐敗との対抗関係を検討する報告、日本の憲法論議における「立憲主義」の不在を問題視する報告、米国、日本、中国の障碍者雇用のあり方を比較検討し、クオータ制と差別禁止政策のそれぞれの長短を明らかにする報告がありました。どの報告も時間をとり、ディスカッサントのGinsburg教授は短いコメントを加えることしか出来ませんでした。

午後の部の後半Concurrent Session 2では、私はChamber 4 (Panel 9)Legal Professionalismに参加しました。第1報告は私の報告でした。報告タイトルは“Current Need for Lawyers in Corporate China— in Comparison with Japan”。201211月から今年1月にかけて行った中国企業の弁護士ニーズに関するWebアンケートのデータを分析し、2007年に行った日本企業を対象とする調査結果と比較検討するもので、中国大企業では日本以上に企業内弁護士の雇用が進んでおり、その地位も日本に比べて高いことを紹介しました。質疑応答でいくつもの質問とコメントがあり、盛り上がりました。これに続いて、静岡大学の藤本亮教授が日本の弁護士の専門分化と二極分化に関する報告をされ、東京では企業法務を専門とする弁護士の収入が大きく、一般民事を扱う弁護士の所得が低いこと、地方では一般民事を扱う弁護士の所得が相対的に高く、東京のそれよりも所得が高いことを紹介しました。これも興味深い報告でした。第3報告では、成均館大学校法学専門大学院教員による国際人権法教育の場としてリーガルクリニックを活用している事例の紹介があり、第4報告では、ニューヨーク州立大学Buffaro校の研究者による中国のプロボノ活動の制度化について紹介がありました。第5報告では、韓国のポルノグラフィーの問題についてキャサリン・A・マッキノンの議論にもとづく検討が行われ、最後の報告では、ANUVeronica Taylor教授が、昨今の経済危機以降の不安定な政治状況下で各国で進められている司法改革に関連づけて、どうしても法曹に任せてしまうことのできない正義の問題を提起されました。いろいろな議論があり、本当に勉強になりました。

午後のセッションの終了後は公式のレセプションパーティー。各国から集まった「法と社会」の研究者との意見交換で盛り上がりました。大会は今日まで続きます。今日は何を学ぶことができるのでしょうか。

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オープニングセッションのステージ背景


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報告中の私



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