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2011.07.14

2011年7月11日大阪大学企業コンプライアンス研究会概要

2011711日(月)1815分から20時半まで、大阪大学豊中キャンパス・法経総合研究棟法学研究科中会議室にて、大阪大学企業コンプライアンス研究会を開催させて頂きました。今回の研究会は、科研費基盤研究(B)「コンプライアンスのコミュニケーション的基盤に関する理論的・実証的研究」(課題番号21330002・研究代表者福井康太)の研究活動の一環として実施した「コンプライアンスとコミュニケーションに関するアンケート調査」の集計結果の分析が進んできたので、得られた知見を研究会メンバーで共有するために開いたものです。少人数ながらも充実した会合になりました。

「コンプライアンスとコミュニケーションに関するアンケート調査」は、コンプライアンスを実施する企業リーダーに期待される役割や資質・能力について実証的に検討し、大学・企業での人材育成に繋げていくことを目的とするもので、よりよいコンプライアンス体制構築のための提言や、企業のコンプライアンス向上に有用な人材育成のための基礎資料を得るためのものです。アンケートは2月末から318日にかけて実施し、全上場会社から3000社を無作為抽出して調査票を送付しました。調査票の回収は、折悪しく311日に東日本大震災が発生したこともあり(アンケート送付先の大半が東京本社でした)、116票 (回収率:3.9%)と極めて少ない回収数に留まりましたが、震災後の東京がかなり混乱していたことを考えると上々な数値だったというべきかもしれません。

基調報告者は本科研費特任研究員の福井祐介氏。同氏はアンケート調査の集計・分析結果を詳細に報告してくれました。印象に残った点は、①半分ぐらいの会社がコンプライアンス専門部署をもっていること、②しかし、コンプライアンスで中心的な役割を果たすのは必ずしもコンプライアンス専門部署ではなく、多くの会社で総務部や法務部であること、③コンプライアンスに活用されている専門家は圧倒的に顧問ないし外部の「弁護士」であること(「司法書士」や「税理士」といった他の専門家、とくに社内の専門家が用いられることは顕著に少ない)、④比較的に軽微なコンプライアンス違反が発生した場合には法務担当役員ないし法務部長が問題への対応を主導し、これを受けて実際に動くのは課題発生部署のミドルマネージャー、一般役員、現場の一般従業員であること、⑤前任者の架空売上計上発覚といった重大な事象が発生した場合には社長自身が問題対応を主導し、これを受けて外部の弁護士などの専門家と課題発生部署のミドルマネージャーが具体的な対応をすること、⑥コンプライアンス担当部署のスタッフや専門職に期待される能力・資質は、上位から状況把握力、情報収集能力、リスク判断能力、問題発見能力、コミュニケーション能力であり、的確に問題を把握してそれを伝達する能力が重視されていること、などです。

気になったのは、コンプライアンス専門部署が必ずしも積極的に活用されているわけではないということです。上記にもあるように、コンプライアンスに関わる問題の多くは総務ないし法務を主管する役員ないし部署が担い、これが課題発生部署と直接にやり取りして問題に対処しています。この背景には、企業がコンプライアンスに力を入れはじめたのは2000年ぐらいからで、まだ日が浅いということもあるでしょう。他方、もしかするとコンプライアンス専門部署は社内にコンプライアンス意識を普及させるための研修を行うような非主流の組織に留まっているのかも知れません。この点については今後の聞き取り調査などを通じて明らかにしていきたいと思います。

また、コンプライアンスへの専門家の活用についても、あまり積極的ではないことが窺われます。顧問・外部の弁護士の利用が比較的に多い結果になっているのは、重大な事象発生の場合には株主等への説明責任を果たす上で弁護士を使って対処することが重要であるためだと思われます。このような場合に対応を誤ると株主代表訴訟が起こされたりする可能性があるからです。他方、日常的な軽微な事象については専門家の協力を得る必要があるとは、特に考えられていないことが窺われます。税理士や社労士、弁理士の資格を備えた従業員は上場企業の場合決して少なくないにも関わらず、社内の専門家はコンプライアンスにほとんど活用されていないからです。この点は、コンプライアンス担当部署のスタッフや専門職に期待される能力・資質にも表れているように思われます。「的確に問題を把握してそれを伝達する能力」が期待されるのは、どちらかというと専門家に対してではなく、社内の担当者(担当役員、現場のミドルマネージャー、一般従業員)だと思われるからです。日常的なコンプライアンスに専門家を使ってもらえるようにするにはどのようにしたらよいのでしょうか。

今回の調査は私たち研究グループに色々な課題を提示しています。今後さらに聞き取り調査等を通じてそのような課題に取り組んでいきたいと思っています。


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Comments

大阪大学企業コンプライアンス研究会 御中

突然失礼いたします.
我々は我が国の技術の目をどう育て,いかに発展させるかを
研究しております.しかしながら,実践途中で,ベンチャー
を食い物にする大企業の横暴・乗っ取り行為に遭遇し,添付の
公開質問状を発しました.下記をご覧いただき,ご理解
いただければ有り難く存じます.よろしくお願いいたします.
http://www.nbl-technovator.jp/compliance.html

発信人
             ビジネスシーズ研究会
コンプライアンス調査委員会
委員長 大阪大学名誉教授 田村進一
 副委員長 福井大学名誉教授 岡崎耕三
             顧問 大阪大学名誉教授 西田俊夫
顧問   ㈱NBL研究所会長 西野義則

Posted by: 田村 進一 | 2011.10.12 07:33 PM

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