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2009.11.07

メルボルン市内のコミュニティーリーガルセンターを訪問しました

日本から裁判官の方が訪問調査のためにメルボルンに来ておられるのに便乗して、2009113日(水)と4日(木)にメルボルン市内にあるコミュニティーリーガルセンター(CLC)を訪問し、いろいろ話を伺って参りました。日本では、リーガルエイドの仕組みが十分に整備されておらず、公的枠組みとしての法テラス(日本司法支援センター)が経済的・社会的弱者の法律扶助を一手に引き受けているというのが現状ですが、オーストラリア、特にヴィクトリア州では、広くpro bono culture(慈善活動文化)が行き渡っているという印象で、様々なコミュニティーリーガルセンターがあり、それぞれ特色ある法律扶助を行っています。今回訪問したのは、PILCH (Public Interest Law Clearing House)Youthlaw2カ所です。

まず113日にはPILCHのメルボルン事務所を訪問しました。PILCHPublic Interestに関わる事案に特化した独立の非営利組織で、人権保護や司法アクセス向上を図るために1992年に設立されたCLCです。年間4万豪ドル未満の所得層を対象に原則無償で公益的な法的サービスを提供しています。PILCHは、メルボルンのほか、複数の地域事務所を抱えており、地域のリーガルニーズに応える体制を整えています。PILCHは連邦政府や州政府の補助金を得るとともに、オーストラリア国内の大手ローファーム(例えばBlake Dawson法律事務所)から補助金や人材派遣を受けて運営されています。人材的には、PILCH専属の弁護士のほかに、政府部門から派遣されてきたフルタイムのスタッフ弁護士、民間法律事務所から派遣されてきたスタッフ弁護士、パートタイム弁護士(他の法律事務所に所属するsecondee solicitor)数十名を抱え、さらにメルボルン大学等から来たLLBもしくはJD課程上級学年の学生ボランティアが運営を支えています。PILCH のメルボルン事務所は大変立地のよいところにあり、事務所内も大変きれいで、潤沢な補助を受けているという印象でした。それだけの潤沢な補助をどのようにして得るのかと聴くと、ヴィクトリア州では、法律事務所はその法的収益の10%に相当する資金もしくは人的サービスをpro bono活動に用いているそうで、大手のローファームもpro bono coordinatorを置いて積極的に公益活動を後押しし、CLCに潤沢な額のmembership feeを払ってくれるとのこと。さらに、大手のローファームは、優秀な学生を採用するために、学生の公的活動を続けていきたいというニーズに応えるべく様々なpro bono programを設けており、その結果大手のローファームに採用された弁護士が一定期間PILCHの事務所に派遣されてきて働くということが可能になっているのだそうです。日本とは大きな違いがあると愕然としたしだいです。

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4日にはYouthlawの事務所を訪問しました。Youthlaw25歳までの若年層の法的トラブルを専門に取り扱うCLCで、2001年に設立されています。設立後まだ歴史が浅いこともあり、6人のスタッフ(フルタイムの弁護士3人、パートタイム弁護士1名、その他2名)、そして学生ボランティア(総員20名弱で実働23名)で運営されているこぢんまりとしたCLCでした。Youthlawは、25歳までの若者の家庭や学校での様々な法的トラブル、例えば、暴力被害や差別その他の人権侵害、労働問題、ホームレス問題、薬物使用、メンタルヘルス問題などについて、親身になって相談に応じ、必要な法的措置などを提供するサービスを行っています。リーガルマターに留まらず、教育学や心理学の知識が必要なサービスが多く含まれており、ソーシャルワーカー等との連携が欠かせない多様な業務を担っているようです。正直な印象としてPILCHに比べると補助金などは潤沢とは言えない印象でしたが、それでも連邦や州の公的補助と民間の法律事務所からのcharity fundmembership feeで運営がまかなわれているとのことでした。ちょうどインタビューのために伺った時間に、事務所の一室で若者に対する教育活動が行われていました。いわゆる「法教育」なのかと聞くと、より広い意味でのライフスキルを身につけてもらうための教育とのことで、例えば、どのようにして職を探すか、採用面接の時にどのような態度をとるべきか、解雇されそうなときにはどうしたらよいのか、といった内容の授業が行われているとのことでした。若者が関わる法的トラブルは様々な問題に広がりを持っており、柔軟な対応能力が求められることが実感されました。

今回のCLC訪問で、日本のリーガルエイドはpro bono文化といかに無縁であるか、手厚い法律扶助を実現するためのリソースがいかに欠けているか、実感させられました。今回の訪問をきっかけに、さらに多くのCLC事務所を訪問してみようと思っております。

PILCH
Youthlaw

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Comments

入江様。ご無沙汰いたしております。CLCには様々なADRプログラムが用意されています。オーストラリアは日本で想像していたよりもはるかにADR先進国で、メディエーションは様々な場面で積極的に活用されています。いずれそちらの方も紹介させていただきます(今回はプロボノネタということで)。

Posted by: Kota Fukui | 2009.11.14 05:09 AM

ごぶさたしております。

オーストラリアでの報告の記事を大変興味深く見せていただいています。

CLCでは、メディエーションは行っていないでしょうか?
米国ではこうした公益的な地域サービスの一メニューとして、メディエーションが位置づけられている場合が多いように思ったので。

よろしくお願いします。

Posted by: 入江秀晃 | 2009.11.13 11:35 AM

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阪大の福井康太先生が、オーストラリアの法的サービスとしてのプロボノ文化を観察され... [Read More]

Tracked on 2009.11.13 11:32 AM

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