2009年7月9日(木)・大阪大学「役員と若手研究者との懇談会(第4回)」概要
2009年7月9日(木)15時から17時まで、大阪大学吹田キャンパスICホール4F会議室にて、「役員と若手研究者との懇談会(第4回)」が開催され、参加して参りました。この懇談会は、大阪大学の総長、理事、監事などの大学役員と、大型科研費などで活躍している若手研究者約30名との間で、研究環境等について意見交換する企画で、大阪大学の研究力を増進するための方策を探ることを目的とする会合でした。容易にまとまりにくい大きなテーマを掲げてあったのですが、グループディスカッションのファシリテーター役のすばらしいコーディネートで充実した会合となりました。
懇談会では、理事・監事の簡単な自己紹介のあと、約40分間、4つのグループに分かれてグループディスカッションが行われました。Aグループでは研究着想について、Bグループではエフォートについて、Cグループでは研究環境とネットワークについて、Dグループでは研究費について、ブレーンストーミング的な議論が行われました。私はBグループの議論に参加しました。ちなみにエフォートとは、全活動時間のうち研究や教育に使うことができる時間の割合のことです。国立大学法人化以降、どの部局でも、処理しなければならない事務や教育の負担が急増し、若手研究者が十分な研究時間を確保することが困難になってきています。そこで、Bグループでは、どのようにして必要な研究時間を確保するかということが議論されることになりました。私自身は、効率的な時間の使い方やワーク・ライフ・バランスなどがもっと議論されるかと思ったのですが、グループでもっぱら議論が集中したのは、事務補佐員等の研究サポートのための人材をいかに確保し、充実化するかという課題でした。COEや大型科研費で事務補佐員等を雇う場合、プロジェクトベースで雇用を行うために、ある程度仕事を覚えてくれた事務補佐員をプロジェクトの終了と同時に雇い止めせざるをえず、次のプロジェクトでは全く新人の事務補佐員を雇うことになり、無駄が多いというのは大きな問題です。新人の事務補佐員雇用については、大学が「人材教育センター」のようなものを設けて、ノウハウの蓄積と継承を図っていくこと、有能な人材を送り込んでくれる派遣会社を確保すること、などいくつかの提案が行われました。もっとも、この問題に関しては、有期雇用についての法的制約もあり、決め手となるような妙案を見いだすことは困難だと思います。
グループディスカッションのあと、各グループのファシリテーターが議論の結果を要約して紹介、それに引き続いて、理事・監事からの感想・コメントが行われました。ここで他のグループの要望・提言を簡単に紹介しておきます。まず、Aグループからは、研究上の着想を得るには他分野との交流が重要だけれども、若手にそのような交流の場は必ずしも十分に与えられていないので、是非ともこれを確保してほしいこと、また十分なリフレッシュスペースがないので、そうしたインフラを充実化することなどの要望が出されました。Cグループからは、研究環境として、共同研究棟の実験装置などを利用しやすい環境を整えてほしいという要望があり、また特任助教や特任准教授の任期をもう少し長くして安心して研究に専念できる環境を整えてほしいという要望が出されました。Dグループからは、研究力の増大は研究費の獲得と直結しており、科研費申請等のサポート体制をより充実化することが重要であること、どこの部局にどのような研究者がいるのか情報の共有化を図り、大学の主導でマッチングを行えるようにすること、特に、旧大阪外大の研究者の情報をマッチングできるようにすることが大阪大学の研究力の向上にとって重要なこと、科研費を申請して不採択だった場合に全く研究ができないというような状態を避けるための資金的サポートを用意することなどが提言されました。
最後に各理事・監事からの感想・コメントが行われました。理事・監事からは、若手研究者の研究時間を確保することの重要性を再認識したこと、優れた着想を得るためには自由な雰囲気のもとで様々な分野の研究に触れることが重要であること、若手研究者が研究と無関係な雑用をこなさないですむサポート体制を作る準備を進めていること、大学のブランド力は優れた研究と人材とであり、優れた人材が集まってくる環境を作らなければならないこと、外大統合を研究力向上に生かしていく仕組みを考えることなどのコメントが出されました。最後に鷲田清一総長が、若い頃の経験談を交えて、研究を進めるに当たっては、ひらめき、ときめき、責任が必要だが、特に「ときめき」がなくなってくると、研究者の辛い側面ばかりが目につくようになってしまうのであり、是非とも若手研究者にはときめきを感じ続けてほしい、そのためのサポートをするのが大学の役員の役割であるという話をされ、これをもって懇談会が締めくくられました。
私の場合も、研究にときめきを感じる機会は減ってきているような気がします。努めて新しいことに挑戦することで、ときめきを取り戻さなければと肝に銘じているところです。
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