2020.02.20

インドでの学生向けセミナーについて

2020年213日(木)から20日(木)までの8日間、インド・グジャラート州ガンディーナガルにあるグジャラート国立法科大学(GNLU)に滞在しています。この滞在の後半の目的は学生向けセミナーを実施することです。海外でのセミナー等の記録はできるだけきちんと残すようにしています。研究教育活動実績としてカウントされるからです。今回の滞在では、217日(月)から19()にかけて3つのセミナーを行いました。

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日月曜日には、GNLU1年次と2年次の学生を対象に、“Transplantation of Western/Modern Law in Japan”と題して、日本の「西洋近代法継受」についての話をしました。この話は、以前から私がGNLUで行ってきた講義 “Introduction to Japanese Law”の初回授業の内容を組みなおしたもので、日本法になじみのない学生でも聞けばわかるように工夫しています。明治日本がいかなる時代背景のもとに、どのような思想に基づいて西洋近代法を受け入れ、法典化を進めたのか、第二次世界大戦での敗戦を経て、日本で継受された近代法はどのように変わったのかについて概説しました。下手な英語でのレクチャーにも拘らず、受講生は熱心に私の話を聞き、質疑応答でも多くの質問が出ました。西洋近代法を法典化してもそれが定着するには時間がかかったのではないか、今でも日本には古い時代の考え方が残っているのではないか、アジアの植民地化は江戸末期から明治初頭当時の日本にどのように影響をもたららしたのか、といったまともな質問が出され、ごくオーソドックスな受け答えをすることになりました(ということは私の下手な英語でも概ねきちんと伝わっていたということです)。

 

18日火曜日には、ガンディーナガルから100キロほど離れた場所にあるParul大学(グジャラート州にある私立大学です)法学部でセミナーを行いました。ここでは、GNLU准教授で共同研究者のリチャ・シャーマ博士と私とで合同レクチャーをしました。まず、シャーマ博士が「法の継受」の総論として一般的な話をし、法の継受は歴史的に連綿と続くものであり、多元的かつ相互的なものであるとの問題提起をしました。私はGNLUで用いた“Transplantation of Western/Modern Law in Japan”のスライドを使いつつも、シャーマ博士の話に引き寄せて、法の継受は継続的なプロジェクトであり、今も日本はグローバル法と国内法を融合させる努力を続けており、その成果はアジア諸国に対する法整備支援をはじめとする国際的支援活動を通じてグローバルに拡大されつつあるという話をしました。質疑応答では、第二次世界大戦後の日本法の展開についての質疑が多く出されました。

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日水曜日には、GNLUのトーマス・マシュー教授(法と科学技術論担当)の授業枠で、“Scientific, Social and Legal Dimensions of Artificial Intelligence”と題して特別講義を行いました。昨日までのテーマとは異なり、科学技術に関わるテーマです。人工知能(AI)がもたらす社会の構造的変化に我々はどのように対処すればよいのか、その際に法はどのような役割を果たしうるのかというような内容の話です。環境問題、生命科学、人工知能といった先端科学技術の問題は科学で扱うことができる範囲を超える「トランスサイエンス」の問題であり、そこでは哲学、倫理学、心理学、法学、政策科学と科学技術とを組み合わせて問題の解決に取り組む必要があることを説明し、より具体的に、「自動運転車」、「AIによって消えていく仕事」、「シンギュラリティー」といったトピックを取り上げ、それぞれに固有の問題に言及しながら、私なりの問題への取り組みの方向を示しました。アイザック・アシモフの「ロボット工学三原則」について言及したりもしたので、学生の関心がSF的な方向に引っ張られてしまったきらいもありましたが、意欲的な質問が多数出され、学生の関心の高さが窺われました。話のむすびとして“Cybernetic Regulation”などという眉唾物の落ちをつけたのですが、これにはあまり学生は関心がなかったようです。

今回行った学生向けセミナーを通じて、GNLUParul大学の学生の向学心の高さが強く印象に残りました。日本の学生もまた、隣の日本人学生と自分とを比べて安心するのではなく、世界にいるこのような学生と切磋琢磨していかなければならないと肝に銘ずるべきです。いろいろ考えさせられました。


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2020.02.16

全インド法制史学会議概要

2020年2月13日(木)から20日(木)までの8日間、インド・グジャラート州にあるグジャラート国立法科大学(GNLU)に滞在しています。この滞在の前半の目的は2月14日(金)・15日(土)に同大学で開催される第1回全インド法制史学会議(1st All India Legal History Congress)に参加すること、後半の目的はGNLUで学生向けセミナーを実施することです。まずは前半の第1回全インド法制史学会議が終わったので、この会議の概要を備忘録的にまとめておきたいと思います。

第1回全インド法制史学会議は、GNLU准教授リチャ・シャーマ博士とインドの国立法科大学初の女性学長となったタミル・ナドゥ国立法科大学V.S.エリザベス教授が呼びかけ人となり、インド初の試みとして、全インドの法制史研究者(法制史を専門とする研究者ばかりでなく、法学研究者で法制史に関心をもつ者も含む)が集まり、開催されることとなったものです。この会議は、インド法制史学会(Indian Association of Legal History)の発足のための会合も兼ねています。全インドから報告者として47名、そのほかに招待された研究者、学生が参加して活発な議論が行われました。

14日朝の開会式では、GNLU学長のSanjeevi Santhakumer教授の開会の挨拶、私の招待講演(東アジアと南アジアの法と社会の近代化について)、V.S.エリザベス教授の招待講演(インドにおける法制史学の歩み)が行われました。私は、ここ5年あまりシャーマ博士と手探りで共同研究を進めている東アジアと南アジアの近代法成立の比較研究(まだ構想段階に留まっている)について紹介し、比較研究の意義について話しました(参加者の反応はまずまずだったのでこちらの意図は一応伝わったと思っておきます)。

午前の部会(Session1)では、Modernisation of Lawの分科会にChairとして参加しました。ここでは「法の近代化」という主題のもとに、NPOの慈善活動のCSRへの影響、国際取引システムの形成要因についての経済史的考察、実務家と研究者との距離の拡大について議論が行われました。若手研究者ばかりのセッションだったこともあり、着眼点の新鮮な議論に接することができ、刺激を受けました。なぜか私の講演についての質疑応答も行われました。

午後前半の部会(Session2)では、Law, Society and Historyの分科会に参加しました。ここでは、Dharma概念の明確化(これは仏教用語ではなく、今でも実際に使われる法概念です)、唐律にみられる刑罰と今日の刑罰との比較考察、「売春」の位置づけに関する植民地化の影響、インド憲法におけるガンディー不在の意味について議論が行われました。

午後後半の部会(Session3)はEnvironment, Urbanisation and Legal History & Science and Technologyに参加しました。この部会はいくつかの分科会を一つにまとめたもので、何でもありの印象。環境法概念形成における法の移植の役割、野生動物保護法(1972年)の立法史研究、インド古代からの法医学実務(Arhahastra)の研究、古代インドの医療倫理の研究について報告と質疑応答が行われました。古代に行われていたことを現代の視点でとらえることの功罪が議論の中心となりました。

翌15日午前の部会では、Decolonisation of Lawの分科会に参加しました。ここでは脱植民地化が主題となり、近代インド都市法とヨーロッパの都市法枠組の関係、古代ギリシャの政体モデルと民主主義、国際法におけるムガール帝国の位置づけ、インド女性の性的同意年齢に関する考察の報告が行われ、意見交換が行われました。

私に前提知識のない議論が多く、また語学力の問題もあり、はなはだ不十分な理解しかできませんでしたが、学会を立ち上げようという熱意が伝わってくる、刺激的な会議でした。

本会議の閉会式でインド法制史学会(Indian Association of Legal History)の設立が建議され、設立メンバーによる承認を得て発足することになりました。インドの法制史研究者による常設の学術団体の誕生です。コモンローの伝統の影響が大きいインドでは法実務が重視され、法制史や法社会学、法哲学など基礎法学への関心はそれほど高くはありません。インド法制史学会はあえてこれに抗い、学術志向を前面に出し、インド法学界の学術レベルを高めることを目指しているようです。インド法制史学会の今後の発展に大いに期待しています。

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2019.12.22

ALSA(アジア「法と社会」学会)第4回学術大会(大阪大会)概要(その4)

15日午前中には、ホテル阪急エキスポパークで、Closing Plenary Closing Ceremonyが行われました。Closing Plenaryでは、最初に、KIM Joongi先生 (Yonsei Law School)が“Access to Economic Justice in Asia: From an International and Comparative Perspective”とのタイトルのもとに、経済的手法による国境を超越した当事者救済の可能性についていくつかの例を示して検討され、これに続いて、Valerie HANS先生 (Cornell Law School)が、“Asian Experiments with Lay Participation within a Global Context“とのタイトルの下に、アジア諸国の司法への市民参加の多様なあり方を概観したうえで、その改革が何故に起こったのか、司法のあり方にどのようなインパクトをもたらしているかを紹介されました。最後に、Bruce ARONSON先生 (NYU School of Law)が、”Utilizing Research on Asian Law to Contribute to General Theory”とのタイトルのもとに、アジア諸国のコーポレートガバナンスの比較研究はコーポレートガバナンスの一般理論に何をもたらすことができるのかについて理論的問題を提起されました。アジア諸国には様々なタイプのコーポレートガバナンス制度があり、それぞれの制度の実効性を比較分析することで、子細な機能分析が可能になるという指摘は、他の制度比較分析にも当てはまる重要な指摘です。

以上、ALSA大阪大会で行われた講演とパネルセッションでの報告の内容を一通り概観しました。今大会についてまず特筆すべきことは、本大会のパネルセッションでの報告数が多く、そこで扱われているテーマも多様であったことです。ALSA発足以来、若干の波はあるとはいえ、一貫して参加者数および参加国数は増えています。今回は、南アジアや中央アジア諸国からグループでの参加が行われるようになり、学術交流のフォーラムとしてALSAの存在意義がさらに大きくなっていることが窺われました。加えて、その質が高かったと多くの常連参加者から指摘されていることも付記しておきたいと思います。今回の大会が弾みになって、ALSAがさらに発展していくことを期待しています。

次回2020年大会はタイ・バンコクのチュラロンコン大学で開催されます。次回の大会が楽しみです。(以上、その4)

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ALSA(アジア「法と社会」学会)第4回学術大会(大阪大会)概要(その3)

14日Ⅰ限には、“Asian Judiciary and Legal Education 1: Gender in the Legal Process and Profession”、“Global Conflict Management”、“Human rights and access to justice for linguistic minorities in Asia”、“Current Issues on Afghanistan”、“Competition Law Reforms in Asian Emerging Economies”、“Constitution & Human Rights”、“Issues on Legal Education”8つのパネルセッションが行われました。ここで注目されるのはアジア諸国の司法と法学教育に関するセッションです。司法に関わる専門家のジェンダー比率に関するアジア諸国の比較研究は様々な広がりを持つものであり、より広い範囲での共同研究につなげていくべき課題です。アジアの言語的少数者に対する司法アクセスの保障の問題も発展性のあるテーマです。さらに、アフガニスタンのパネルセッションが行われたことも注目されます。

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日Ⅱ限には、“Asian Judiciary and Legal Education 2: Lay Participation in the Justice System”、“Social Change and the Role of Courts in East Asia”、“The Hong Kong Extradition Bill Saga: Social Movements at the Local Level and Beyond”、“Sex Crime on Trial- A Comparative Study between Japan and Australia”、“Issues of Intellectual Property Law in Asian Emerging Economies”、“Issues on Disaster and Law”、“New Trend of Human Rights”、“Legal Issues on Religion & Culture”ALSA Distinguished Book Award Panel, “The Politics of Love in Myanmar: LGBT Mobilization and Human Rights as A Way of Life” (Stanford 2019)9つのパネルセッションが行われました。ここで注目されるのは、司法への市民参加のセッションと、香港における強制連行法案をめぐる闘争史のセッションです。後者はいま香港が直面している政治問題を正面から取り扱うものであり、特に関心を引きます。ALSA Distinguished Book Awardのパネルも今年の受賞作についての講評であり、重要なセッションとして位置づけられます。

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日Ⅲ限には、JASL Session: Ghosn Scandal and Japanese “Hostage Justice”Osaka Bar Association Session: “Current situation and future prospects of ADR in Japan”、“The problem of "Inclusive" legal education for foreigners Society”、“Corporate Governance in East Asia: A Comparative Approach”、“Constitutional & Administrative Litigations in the Contexts of Constitutionalism in Asia”、“Global Pact for the Environment and Polluter-pays-principle”、 “Medical ADR & Dispute Resolution”、“Legal Issues on Child & Juvenile”8つのパネルセッションが行われました。ここで注目されるのは、日本法社会学会(JASL)セッションとして行われた人質司法に関するパネルセッション、そして、大阪弁護士会の行った日本のADRの将来に関するパネルセッションです。言うまでもなく、日本の「人質司法」は国際的に非難されているものであり、カルロス・ゴーン事件に引きよせてアジア諸国の研究者とこの問題に関する理解を共有することには大きな意味があります。大阪弁護士会は民事紛争についてADRによる紛争解決を積極的に推進していますが、2018年に日本国際紛争解決センター(JIDRC)が開設されたことを受け、国際民事紛争解決におけるADR活用について実務的観点から紹介するパネルセッションを設け、アジアの実務家等と意見交換を行いました。国際環境条約と汚染者責任原則のセッションもタイムリーな問題を扱っており、注目に値するパネルセッションでした。

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日Ⅳ限には、“Asian Judiciary and Legal Education 3: The Judiciary”The ALSA Presidential Session, Part II: “The Anthropocene and the Law in Asia”、“Massive Inclusion in Japanese Society”、“Issues on Company and Property”、“Land Law Reforms in Asian Emerging Economies: Toward Balanced Development”、“Legal Approaches to Environmental Management”、“Legal and Social issues on Labor”、“New Trends of Criminal Law-1”8つのパネルセッションが行われました。ここでもまたALSA Presidential SessionPart 2 の環境問題に関するパネルに参加者が集まっていました。アジアの土地問題に関するパネルセッションも、新興のアジア諸国では土地問題が様々な形で社会問題化していることから、注目を集めました。刑事司法の新潮流のパネルセッションも関心を引いていました。

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日Ⅴ限には、“Asian Judiciary and Legal Education 4: Legal Education”、“ALSA Book Introduction Session”、“Discrimination Issues”、“Business and Human Rights”、“Medical Conflict Management”、“Environmental Issues”、“Current Issues on Hong Kong and Taiwan”New Trends of Criminal Law-2”8つのパネルセッションが行われました。ここでは、法学教育、医療紛争、そして香港と台湾の問題を扱ったセッションが注目されていました。

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日夕刻のConference Dinner中に行われた、樫村志郎先生によるDinner Speechも学術的な内容であり、報告の一つとしてカウントしてよい。樫村先生の講演は、「法現象の分析」に関わるもので、行動は規範によって直接に規律されるのではなく、規範が特定の内容として維持し管理されることによってはじめて規律されることを指摘するものでした。このような分析が大会のパネルセッションには見られなかっただけに、樫村講演は貴重でした。(以上、その3)

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ALSA(アジア「法と社会」学会)第4回学術大会(大阪大会)概要(その2)

13日金曜日Ⅰ限には、オープニングセレモニーとキーノート/プレナリースピーチが行われました。キーノート/プレナリースピーチでは、まず、Brian Z. TAMANAHA先生(University of Washington in St. Luis School of Law)が、“Law across Human History in Twelve Key Aspect”とのタイトルで、増大する社会の複雑性と権力の影響力という二つのテーマに引き寄せて、リアリスト的法理論の立場から、法の特徴的側面を概観する基調講演を行われました。これに続いて、Tom GINSBURG先生(University of Chicago Law School)が、“Social Upheaval and the State of Democracy in Asia”とのタイトルで、アジア諸国の民主主義の現状と課題について批判的に検討。さらに、Daw Than New女史(Myanmar Academy of Arts and Science)が、"Reality of law reform in Myanmar in the involvement of various development partner's"とのタイトルでミャンマーの法改革の実際について紹介。最後に、阿部昌樹先生(大阪市立大学、日本法社会学会)が“Law as a Reason”とのタイトルでアジア各国における理由としての法の捉え方の違いとその違いが生ずる要因にまで遡って検討する報告をされました。

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日Ⅱ限には、"Early Findings from Survey on General Public over their Disputing Experience”、“The Legal Professions in Asia: Reform, Challenges and Other Issues”ALSA Presidential Session, Part I: “The Anthropocene and the Law in Asia”、“New Trend of Consumer Law”、“Remaining Issues of Disaster Law”5つのパネルセッションが行われました。ここで注目すべきなのは、ALSA Presidential Session, Part 1The Anthropocene and the Law in Asia”です。人類の活動が自然環境に直接間接の影響を与えるようになったいま、人類はこの問題にどのように取り組めばよいのか、その際に法はどのような役割を果たしうるのか議論するセッションです。30名を超える参加者があり、このテーマへの関心の高さが窺われました。

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日Ⅲ限には、“Legalization, Moralization, and Disciplination in Modern Japanese Education System”、“AI-assisted Court System: How AI Can Help Judges, Lawyers, and Litigants”、“Legal Transplant (1)”、“South Asia Session”、“Author Meet Readers (AMR) Jury Trials “Revolutionize” Japan: Lessons from the Experience of Civil Jury Trials in Okinawa (Research Group on Jury Trial (RGJT), Nippon-Hyoron-Sha, 2019)”、“Comparative Disaster Management Law and System in Asia”、“Judicial Review & Litigation”、“Aging Society and Law”8つのパネルセッションが行われました。ここでは、AIを用いた司法制度の可能性や災害法制、高齢社会をテーマとするパネルに注目が集まりました。沖縄の民事陪審に関する著書のブックレビューが行われたこと、南アジアの近代化に関するセッションが行われたことも注目に値します。

13
日Ⅳ限には、“Sovereignty, Human Rights and Historical Memory”、“New Trend of Trade Law”、“Legal Transplant (2)”“Good governance in economic development: National and international perspectives on transparency and accountability”、“Land Expropriation in 4 East Asian Jurisdictions (Japan, Korea, Taiwan, and China) in an Era of Population Decline”、“Goals of Disaster Recovery Law: Variation of Build Back Better I”、“Current and Future issues of Judiciary & Litigation”、“Judicial Reform and Dispute Resolutions in Asian Emerging Economies”8つのパネルセッションが行われました。ここでは、歴史的記憶、法の移植、経済発展のグッドガバナンス、人口減少時代における土地収用問題、災害復興、紛争解決制度改革といったテーマについて議論が行われました。

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日Ⅴ限には、“Early Career of Japanese Attorneys from the 62nd and 67th Cohort Web Survey Results”、“The First 10 Years of Japan’s Reformed Prosecution Review Commissions”、“Issues on Legal Theory”“Constitutional Politics in Central Asia”“Commons, Boundaries and Legal Personality: Comparative Study in East Asia toward Inclusive Property”“Goals of Disaster Recovery Law― Variation of Build Back Better II”、“Current issues on Administrative Reform”、“Issues on Gender and Law”8つのパネルセッションが行われました。ここでは日本の若手弁護士の初期キャリアについての調査結果の紹介(科研費共同研究の紹介)が行われたほか、法の理論、憲法問題、土地利用についての比較研究、災害復興法の課題、行政改革、ジェンダーと法といったテーマが議論されました。(以上、その2)

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ALSA(アジア「法と社会」学会)第4回学術大会(大阪大会)概要(その1)

  2019年1212日から15日までの4日間、大阪大学豊中キャンパス(最終日はホテル阪急エキスポパーク)にて、Asian Law and Society AssociationALSA)第4回学術大会(大阪大会)が開催されました。大会テーマは「拡張するアジア:変わりゆく法と社会的正義」です。私は本大会の開催責任者(Chair)を務めさせていただきました。本当に貴重な経験でした。

本大会には、東アジア、東南アジア、オセアニア、南アジア、中央アジア、北米、欧州の26か国から300名を超える参加者を得、質の高い活発な議論が行われました。本大会の大会テーマは「拡張するアジア:変わりゆく法と社会的正義」です。パネルセッション数は若手ワークショップ、プレナリーセッション、クロージングプレナリーセッションを含めて72パネルあり、1213日から14日にかけて、午前から午後まで(Ⅰ限~Ⅴ限 各105分)同時並行で8から9パネルのペーパー/グループセッションが行われました。これまでにない盛会で、パラレルセッションの割り振りには大変苦労しました。(以上、その1)

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2019.10.14

2019年10月13日(日)日本法社会学会関西研究支部研究会例会概要

2019年1013日(日) 13時から17時半まで、同志社大学寒梅館6F会議室にて、日本法社会学会関西研究支部研究会例会を開催しました。報告者は2名。前回の研究会からかなり間が空いてしまいましたが、いずれの報告も内容が充実しており、学ぶことの多い研究会でした。以下は備忘録的なメモです。

1報告は、花村俊広氏(大阪大学大学院博士後期課程・社会保険労務士)による「労働局あっせんにおけるあっせん委員の業務プロセスに関する研究―パワーハラスメント事件を題材としたインタビュー調査―」でした。花村さんは、社労士業務の傍ら他大学の修士課程を修了して、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程に進学された方です。自らも経験のある労働局あっせん業務について、あっせん委員の実務経験が2年以上ある者を対象とした半構造化面接によるインタビューを実施し、得られたデータをM-GTAにより分析し、あっせん委員が、どのようにして当事者間の話合いを促進しているのか、手続を進めるうえでのボトルネックは何か、といったことを解明することで、委員の資質向上等を図っていくためのモデル形成を行うという、意欲的な研究成果の報告です。あっせん手続は非公開ゆえ、インタビュー調査の実施には様々な困難があり、対象者の選定にもどうしてもバイアスがかかってしまうという点で限界はあるものの、実務と理論を融合させた優れた研究であることは確かです。花村さんのこれからの研究のさらなる進展が期待されます。

2報告は、樫村志郎氏(神戸大学大学院法学研究科教授)による「理解社会学の継承者としての Parsons Garfinkel — Parsons 1937年までの初期著作とGarfinkelによるParsons Primer(『パーソンズ入門』)の読解を通じて—」でした。通俗的な社会学史では、パーソンズ社会学とガーフィンケルのエスノメソドロジーは逆接的関係にあると見られがちです。しかしながら、ガーフィンケル は1946年から1951年までパーソンズ の学生であり、1960年頃にはパーソンズと少なくとも一部では共同研究をする関係にあり、したがって、ガーフィンケルは当然にパーソンズの強い影響を受けています。どのような問題意識のもとにパーソンズが社会システム理論を作り上げていったのか、その問題意識はガーフィンケルにどのように受け継がれているか、パーソンズのHolismや目的手段図式、規範の位置づけなどを一つずつ明らかにすることで、解明が試みられました。樫村報告はあまりに情報量が多く、私には理解できていないところが多々あるのですが、パーソンズの初期著作の解釈から、社会的秩序の成立可能性についての問いを掘り下げ、パーソンズの問題意識を浮かび上がらせる手際のよさは圧巻でした。 

今回の研究会でも、いろいろ勉強することができました。なかなか報告者が見つからず、充実した研究会を実施するのは大変ですが、頑張って続けていきたいと思います。

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2019.07.18

第15回仲裁ADR法学会大会概要

2019年7月13日(土)に、首都大学東京晴海キャンパスで、第15回仲裁ADR法学会大会があり、参加して参りました。毎年、仲裁やADRを研究している研究者や実務家(弁護士にかぎりません)が集まり、その時々の重要なテーマについて議論する大会です。今回もいろいろ示唆を得ました。ただ、大会からすでに時間が経ち始めているので、簡単な感想を備忘録として残しておくことにします。

大会はお昼過ぎから。前半は個別報告2件が行われました。

第1報告は石原遥平会員(公益財団法人日本スポーツ仲裁機構仲裁調停専門員、弁護士)による 「スポーツ仲裁の現状と課題~仲裁機関として果たすべき役割~」でした(司会は早川吉尚会員)。本報告は、設立から16年が経ったスポーツ仲裁人機構のこれまでを振り返るとともに、現在の取り組みを紹介し、さらに、これから同機構がどこに向かっていくのかを紹介する報告でした。判断基準の不明確や判断結果のフィードバックをどのように実現していくかというのが、今後の利用拡大にとって不可欠とのこと。今後の発展に期待しています。

第2報告は、中西淑美会員(山形大学)による「コンフリクト・マネジメントとしての医療メディエーション」でした(司会は入江秀晃会員)。中西さんは早稲田大学の和田仁孝教授と組んでコミュニケーションを通じた医療紛争の予防と解決の研究・実践に取り組んでおられ、今回の報告はその研究・実践のエッセンスの紹介。コンフリクトの重層性についての検討やグリーフケアとしての事故対応といった視点の提示は圧巻でした。中西さんにはさらにこの研究・実践を深めて行ってほしいと思っています。

後半はシンポジウム。テーマは「交通事故ADRの現代的意義」(司会 中山幸二会員)。報告者は、古笛恵子会員(弁護士)、竹井直樹会員(公益財団法人損害保険事業総合研究所シニアフェロー)、八田卓也会員(神戸大学)。最初に、古笛会員が、(一財)自賠責保険・共催紛争処理機構、(公財)交通事故紛争処理センター、(公財)日弁連交通事故相談センター、弁護士会ADRセンターの交通事故紛争解決制度の概要を紹介。続いて、竹井会員がそんぽADRセンターの紛争解決制度の概要を紹介。これに八田会員が研究者の立場から理論的仮説の提示をするという興味深い構成のシンポジウムでした。

苦情処理手続、紛争解決手続とその基準についての実務上の問題提起もさることながら、八田会員の問題提起は秀逸でした。八田報告は、費用便益分析を用いて、裁判所とADRとの適正な役割分担を考察する報告でした。交通事故ADRの新受件数の減少と簡裁事件の増加は交通事故保険の弁護士特約の影響なのかという問いから出発して、安価、迅速、解決内容の妥当性という要素が満たされるのであればADRによる解決も評価できるが、他方、弁護士特約による簡裁事件の増加からはADRがそのような機能を十分に果たし切れていないことが窺われるとし、さらに、弁護士特約の結果として当事者による濫訴や弁護士による時間の引き延ばしというようなモラルハザードが生じていないかを問い、妥当な落としどころを模索する内容でした(私なりの要約なので間違いが含まれているかもしれません)。解決金額について「任意基準<裁判基準」という現実があるなかで、安価、迅速、相対的な妥当性という価値を求める当事者は多く、ADRの活性化はそのようなニーズに答えることで実現できるのではないか、その場合、ADRのデータ開示等をすることで、判断基準の適正化も図ることができるのではないか、という指摘には唸らせられました。

質疑応答の詳細は省略しますが、交通事故紛争の解決基準やデータ公開の可能性、争訟性の高い事案をどのように取り扱うかといったことについてフロアとのやり取りが行われました。

今年の仲裁ADR法学会でも大いに学ばせていただきました。来年が楽しみです。

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2019.06.22

RCSL 2019 オニャーティー学術大会概要その3

RCSL (Research Committee of Sociology of Law) 2019年国際学術大会に参加するため、スペイン・バスク州のオニャーティーに来ています。大会3日目(最終日)の621日(金)は、半日のうえに記念企画が詰まっていたので、1セッションが1時間ずつ。あっという間に終わってしまいました。

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日の第1セッションでは、Human Rightsの部会に参加しました。ここでは国際条約の国内法化や先住民の人権について議論が行われました。報告は2件。最初の報告は、日本のヘイトスピーチ対策法(2016年)は人種差別撤廃条約の国内法化として位置づけられるかどうかを問う報告。様々なアクターが関わりながら国際圧力と草の根の力との両方によって同法が制定されたことが紹介され、部分的にではあれ同法は人種差別撤廃条約の国内法化と言えるとのこと。第2報告は、カナダの先住民の置かれた状況と先住民の権利保護の難しさについて紹介するものでした。先住民と連邦政府、州政府の間の合意は対等な関係が確保できず、それによって先住民の権利保護を図ることは困難です。ではどのようにしたらよいのかと思っていたら、困難さの指摘だけで報告は終わってしまいました。

2セッションでは、Modernizing Adjudicationの部会に参加しました。ここでは裁判手続のICT化、AI化について議論が行われました。ここでも報告は2件。最初の報告は、ポルトガルで進められている裁判手続のICT Courtについての紹介でした。ポルトガルの裁判所は司法裁判所と行政・税務裁判所の二本立てになっているそうなのですが、前者についてCitius、後者についてSITAFというプロジェクトが進んでおり、訴訟手続の効率化、迅速化、適正化が図られているとのこと。いずれについても、費用面での魅力はあるものの、なお手続保障の点での課題は多く残されているようです。第2報告は、中国の裁判手続のAI化についての報告でした。中国は人口が多く、裁決手続の効率化の要請は他の国よりもはるかに大きいとのこと。そこで、1999年以来3期にわたる司法改革5か年計画を経て裁判手続のICT化、AI化が急ピッチで進められてきたそうです。後発国のメリットもあり、実際に多くの改革が進められ、最近導入が進められているWisdom CourtRobot Judge)は世界中の注目を集めているとのこと。もっとも、過大な期待は禁物で、可能なことは何であるか冷静に見極めることが必要なのは確かです。

このあとIISL創立30周年記念企画として、プレナリーセッション3が行われました。詳細は省略しますが、8か国の代表的研究者がパネルに登壇し、これからの時代に法社会学者に何が可能なのか、議論が行われました。このセッションの途中で私は中座したので、どのような落ちが付いたのかわかりません。そのあと閉会式があり、大会は無事に終了したとのこと。

議論の内容の密度が濃く、まだ未消化ですが、振り返りを行いながら咀嚼していくつもりです。来年の大会にも参加出来たらよいなと願っています。

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2019.06.21

RCSL 2019 オニャーティー学術大会概要その2

RCSL (Research Committee of Sociology of Law) 2019年国際学術大会に参加するため、スペイン・バスク州のオニャーティーに来ています。大会2日目の620日(木)は、大会の中日で、中身の濃いセッションが多数ありました。以下は備忘録を兼ねた概要です。

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日の第1セッションでは、Disputing Endangered Rightsの部会に参加しました。この部会で私も報告(第3報告)をしています。この部会では、紛争解決方法や紛争解決行動に関する議論が行われました。具体的には、ポルトガルの再婚家族(Stepfamily)の子供の権利保護についての報告、中国の司法的環境救済手続の行政化についての報告、「超高齢社会における紛争経験と司法政策プロジェクト」の調査研究の一環として行われた「暮らしのなかの困りごとに関する全国調査」(2017.1112)の相談先満足度についての調査結果の紹介報告(私の報告)、ブラジルの労働仲裁についての立法動向の紹介が行われ、フロアを交えた議論が行われました。子供の権利保護のために再婚後の血縁のない親にも事実上の親としての義務を課するべきこと、環境訴訟で損害賠償による救済を図ることが困難な中国で救済を実効化するためには、救済手続の行政化を行うことは一歩前進ではあるのだけれど、予見可能性や正統性の点で問題があること、労働仲裁は私的な紛争解決方法であり、手続保障になお問題があり、経済的弱者に対して用いられる場合には一定の規制が必要であることなど、もっともな指摘が行われました。私の報告では、トラブルの相談先は単にしっかりと話を聞けばよいというだけではなく、適切な情報提供や交渉のサポートなどきちんとした対応を行わなければ、利用者のより高い満足を得ることができないことをデータに基づいて紹介しました。最近の調査では、しっかり話を聞くことが相談先のより高い満足度につながるという調査結果が多かったので、反応は上々でした。

2セッションはプレナリーセッション2だったのですが、IISL創立30周年の記念講演だったので紹介を割愛します。

3セッションでは、Judicial Professionals’ Working Conditionsの部会に参加しました。ここでは、裁判官、検察官、Magistrateなど司法職のワークライフバランスや仕事のストレスに関する議論が行われました。具体的には、オーストラリアの裁判官、Magistrateの仕事と家庭生活の両立の難しさについての調査報告、労働条件に関するパラダイムシフトを文献調査で明らかにする報告、仕事の重要性は仕事の満足度に関わる一方、ストレスの原因ともなるというジレンマについて検討する報告、司法の質(Quality of justice)の歴史的変遷についての報告、裁判官、検察官、Magistrateの労働条件に関する立法動向の紹介が行われました。最初のオーストラリアに関する報告を除くと、ポルトガルで行われた共同研究の成果を紹介する企画だったようで、議論が内輪向きであり、率直に言ってあまり興味を引くような内容ではありませんでした。

4セッションでは、Attitudes of Japanese Litigants and Their Lawyers toward the Civil Justice Systems: Preliminary Results of the National Surveyの部会に参加しました。この部会では、「超高齢社会における紛争経験と司法政策プロジェクト」の「訴訟利用調査」についての現時点での調査結果の紹介が行われました。最初に、今回の「訴訟利用調査」が行われるに至った経緯や調査目的の紹介が行われ(太田勝造)、これに続いて、弁護士増員にも拘わらずここ10年以上にわたって訴訟新受件数が増えていないのは何故なのかについての検討結果が紹介され(ダニエル・フット)、さらに、当事者が本人訴訟を選ぶ理由についての分析結果の紹介(長谷川貴陽史)、そして、訴訟利用満足度についての分析結果の紹介(齋藤宙治)が行われました。司法制度改革で大幅な弁護士増員が図られたのに訴訟利用が増えないのは何故なのかはずっと気になっている問題です。弁護士が訴訟をあまり受任したがらないという事情があるようですが、このあたりはさらに掘り下げた検討が必要でしょう。当事者が本人訴訟を行うかどうかの決定は、弁護士報酬が高いということとともに、自分でもできると思ったからという、ある意味身もふたもない結論には妙に納得しました。訴訟利用満足度が、勝ち負けに関わるのみならず、裁判官や弁護士に対する評価の高さが関係しているというのも理解できる結論です。これから行われるさらなる分析が期待されます。

5セッションでは、Lawyers in 21st-Century Societies – 2の部会に参加しました。ここでは、21世紀になってからの各国の弁護士のあり方の大きな変化が議論されました。具体的には、ドイツのリーガルエイドのあり方の変容の紹介、旧社会主義圏である東欧諸国の弁護士のあり方の変容についての各国比較、弁護士人口が急増しているブラジルの弁護士業務の多様化についての紹介、そしてクロアチアとセルビアでの司法の信頼失墜が弁護士のあり方にもたらしている危機についての報告が行われました。弁護士の置かれている状況が激変していることはいずこでも同じなのですが、その具体的な表れは各国それぞれです。ドイツのリーガルエイドが弁護士の訴訟支援から行政などによる当事者サポートに補助の重心を移しているというのは、弁護士費用が高額化している状況の下では避けられない傾向のように思います。旧社会主義圏で法曹増員が行われた結果、新自由主義的傾向が強まる一方、弁護士のギルド化がかえって進んでいるというのは意外でした。ブラジルの弁護士人口は単に多いだけでなく増加率も高く、その圧力で弁護士が様々な業務を新たに開拓していることは理解できます。もっとも、それが野放図であるという印象はぬぐえません。クロアチアとセルビアの弁護士の置かれている状況は、司法制度への信頼が大きく損なわれている中かなり困難なものとなっているようですが、それでもなお弁護士はある程度の信頼は維持しているという調査結果が紹介されました。しかしながらこれは本当に正しいのでしょうか。報告者の願望がかなり含まれているような印象を受けました。

大会2日目には、いろいろな議論を咀嚼しなければならず、消化不良の状態です。少し時間をかけて理解を深めていきたいと思います。


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